理事長所信
2023年度 スローガン

基本理念
地域起点の青年会議所運動を展開しよう
基本方針
地域が抱える社会的課題に対して、より良い変化をもたらす存在となろう
品格と良識ある青年経済人として成長できる組織となろう
事業計画
- 明るい豊かな那賀地域を描いたビジョンを策定する
- 地域のニーズを知り、地域起点の運動を展開する
- 理念共感型会員拡大を実現するための基盤を形成する
- 会員個々の力を最大限活かすことのできる組織運営を行う
- 新たな時代のリーダーとなるための学びを会員へ提供する
2023年度一般社団法人 那賀青年会議所 理事長所信
理事長 澤田 淳
1949年、明るい豊かな社会の実現を理想として、日本の青年会議所運動は始まりました。
以降、共に向上し合い、社会に貢献しようという理念のもと、各地に次々と青年会議所が誕生していきます。
この潮流の中で那賀青年会議所が1969年に誕生し、今年で54年が経とうとしています。
那賀青年会議所が創立された当時と現在とでは、自然環境、人口構成、産業構造、教育・文化水準、交通・生活・通信インフラ等の社会基盤など、
あらゆるものが当時と異なっていることは、那賀青年会議所の創立当時の環境を知らない会員であっても容易に想像できます。
当然ながら、創立当時と現在では地域の環境や状況が異なるため、創立当時の地域課題と現在の地域課題は異なります。
そうした点で、地域のために活動をし続ける団体は、向き合う課題を常に更新し、新たに発掘された課題を解決するために自らをアップデート
し続けなければならないと言えるでしょう。
そのために私たちは、自らの立場や視点に固執することなく、目の前の事象を捉えなければいけません。
それができなければ、地域を想い行っているはずの活動が的外れなものとなってしまう危険性があります。
明るい豊かな社会を目指し活動する地域のリーダーたる我々は、自らの立場や視点に固執することなく、
常に複眼的な思考や考察を持って地域課題の解決に挑戦し続けましょう。真に地域のためを想い、活動をする姿からは共感が生まれ、
この運動を引き継いでくれる仲間との出会いにもつながっていくはずです。
明るい豊かな社会とは
あなたは、どのような社会が明るい豊かな社会だと考えていますか。
まず、私たちはこの定義を改めて考えなければなりません。なぜなら、個々の会員が思い描く”明るい豊かな社会”が全く違うものであれば、
同じベクトルで力を合わせることができず、組織として結集している意味が薄れてしまうからです。
明るい豊かな社会、それは物質的な豊かさを享受できている社会でしょうか。または精神的な豊かさを感じられている社会のことでしょうか。
様々な価値観が存在する中で、那賀青年会議所として、どのような社会を”明るい豊かな社会”と位置付ければ良いのでしょうか。
私は、その答えを「JC宣言」に求めたいと思います。なぜなら、JC宣言は青年会議所としての誓いであり、
私たちは宣言で述べられている社会を目指すために活動をしているためです。
まず、”輝く個性が調和する未来を描き”というキーワードからは、排他的ではなく、様々な立場や価値観、視点等があることを理解し、
それらを包摂した地域社会を築いていく決意が読み取れます。
私は、これは現代社会が抱える課題を解決するためには非常に理にかなった考えであると考えています。
解決されずに残っている地域課題、また現代に新しく生じた種類の課題については、様々な事象が複雑に絡み合って解決を困難とさせている場合が多くあります。
そのような課題の解決において重要な存在は、特定の知識や経験を有したリーダーではなく、様々な立場の人が協力して、
その持てる知恵と情熱を注ぎ合うことのできるプラットフォームであるからです。
特定の誰かの思想信条や価値観、視点で地域の未来を描くのではなく、大変ではあるけれども、立場、環境、出自等の違いから生じる様々な壁を越え、
各人が有する固有の知恵や経験を注ぎ合うようにして未来を描くことが我々JAYCEEの役目であり、地域のリーダーと言えるのではないでしょうか。
続いて、”持続可能な地域を創る”というキーワードからは、短期的な利益の追求のために自然環境や人を破壊してきた人類の歴史を反省し、
長期的な視点で地域の未来を創っていこうという決意を感じずにはいられません。
しかし、私たちはここでまた問い直さなければなりません。
あなたは、どのような地域を"持続可能な地域"だと考えていますか。
私は、持続可能とは"循環"や"再生産"と言い換えることができると考えています。つまり持続可能な地域とは、循環型社会や再生産可能な地域である、と言えます。
例えば、消滅可能性都市は人口の再生産が可能ではないために消滅する恐れのある自治体のことです。
リサイクル可能な資源を廃棄することは循環の連鎖を断ち切ることで、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会へと向かいます。
明るい豊かな社会は、青年会議所の会員という特定の層の人たちが部屋にこもって話し合いを続けることで実現できるものではありません。地域に存在する様々な人たちの暮らしや
働きを知るというフィールドワークの要素を取り入れることなく実施された活動は、自分達の自己満足で終わる可能性があります。
地域が起点ではないことは地域のためではありません。前述の2つのキーワードを念頭に置きながら、積極的に地域を知り、学び、参画してもらえる地域起点の運動を展開することで、
さらに地域の人たちが参画していただけるという仕組みが生まれます。そのために、地域に対する絶え間ない働きかけを個々の会員が心がけ、那賀青年会議所を地域から必要とされる持続可能な組織に発展させていきましょう。
青年が牽引する団体としての役割
青年会議所は20歳から40歳の青年が加入することのできる組織です。青年は、親の子どもとしての立場、配偶者という立場、自身が親であるという立場、
働く職業人という立場、地域を担う市民という立場など非常に多くの役割を担っている存在であるということ、また他の年代と比べてそれらの役割をこなすことを強く
求められる年代という特徴があります。そうした特徴を持つ青年という存在が果たすべき役割は非常に大きく、
青年によって組織されている那賀青年会議所が果たすべき役割もまた非常に大きいと言えるのではないでしょうか。
青年ならではの、様々な立場から物事を見ることができる力と行動力、そして地域を起点とした青年会議所運動の展開が合わされば、
明るい豊かな社会は、少しずつではありますが、しかし着実に実現できると、私は信じています。
地域において、青年は間違いなく地域を牽引するリーダーとなる存在です。しかし、現代において必要とされているリーダーは、従来のリーダー像とは異なります。
従来のリーダーは、その強力なリーダーシップをもって組織を引っ張り、リーダーを頂点としたピラミッド構造の階層をした指揮命令系統が特徴です。
それに対し、現代に求められるリーダーは、人に対して何をするべきかの指示ではなく自分が心に描いている理想の世界を共有し、
仲間が目標を達成できるように進んでリスクを取る姿勢が求められます。
これは組織マネジメント分野で言う、不確実な時代において有効とされる自律分散型組織と通じています。大きな目標を会員が共有しながらも、
各々が複眼的に物事を捉えて、組織や個人が目的実現のために俊敏に動く自律分散型組織は、青年が持つ活力や情熱を最も引き出すことのできる組織の形態でもあります。
新型コロナウィルスの世界的蔓延によって社会の在りようが大きく変化した不確実な時代であるからこそ、また容易に解決できない問題が地域に残されているからこそ、
私たちは従来型のリーダーから現代に求められるリーダーへと変革していく必要があります。
そうした新たな時代のリーダーは、どのようにして地域に貢献していくべきなのでしょうか。
私は、地域が那賀青年会議所に何を求めているかを知るところから始まると考えています。
個々の会員が自律分散的に地域を知り、学ぶことを通じて、那賀青年会議所にしか応えることのできない問いに誰かが気付き、
その者の呼びかけに応じて青年の持てる活力と情熱を結集させて行動することによって、地域への貢献は始まると信じているからです。
情熱を持った運動展開のために
どれほど個々の会員に優れた能力や知恵、経験があったとしても、その持てる内なる資源を注ぎたいと思えるほどの情熱を青年会議所に対して持てていなければ、
青年会議所運動は発展しません。この情熱はいわゆる「やる気」や「モチベーション」のことであり、アカデミックな表現を用いると「動機付け」されているかどうか、と言えます。
どのようにすれば、青年会議所運動に対して会員を鼓舞し続けられるのでしょうか。
これは、新しい時代に求められるリーダーにおいて、持ち合わせていなければならないスキルです。
この問いに対して、限られた個人の経験則で答えを出すことは、時として事態を悪化させることがあります。
それよりも有効で確実な方法として挙げられることは、解決したい課題に関する理論を学び実践することです。
やる気やモチベーションにおいては動機付け理論が役に立ち、まず動機付けには”外発的動機付け”と”内発的動機付け”の2つがあると言われています。
外発的動機付けは、自分の外からもたらされることによって行動が促されることであり、例えば、金銭、名誉、賞罰などです。
「お金をもらえるからする。」「やらないと責められるから取り組む。」などが該当します。
それに対して内発的動機付けは、自分の内から湧き出る感情や期待感などによって行動が促されることであり、例えば、興味や関心、達成感、向上心などです。
「楽しいから取り組んでいる。」「達成した時の満足感が忘れられない。」などが該当します。
さて、どのようにすれば個々の会員が青年会議所運動に対して、さらに情熱を高めることができるのでしょうか。
動機付け理論において、外発的動機付けは取り組むことが明確で非創造的な取り組みにおいて有効とされている一方で、内発的動機付けは答えが明確ではない、
創造性が求められるような取り組みにおいて有効とされています。
今日において、私たち那賀青年会議所が解決しようとしている課題の解決に適した動機付けの方法は、上記のどちらと言えるでしょうか。
私たちが解決しようとしている課題は、解決されずに残っている地域課題、また現代に新しく生じた課題であり、解決の方法が明確に示されているわけではありません。
そのような、創造性が問われる場合に重視すべきは内発的動機付けです。私たちは、個々の会員の興味関心や情熱が高められるような運営を心掛け、
ひいては地域に貢献できる組織として青年会議所運動を展開してきましょう。
結びに
個々の会員がそれぞれに持つ、興味や関心、達成したい事柄、向上させたい能力、大事にしたい価値観などを感じ、大切にして
思いやりのあるコミュニケーションを重ねることが、自身が所属する組織に対する安心感を育てます。
さらに、会員の価値観を肯定し尊重することで自尊心を養い組織に誇りを持つこともできます。
人は安心感や自尊心を所属する組織に持てているからこそ組織に対して情熱を持ち、自身の持てる知恵と経験と能力を最大限発揮できます。
那賀青年会議所は、会員が安心感と自尊心を持って自由に意見を発言し、行動し、選択できる組織であるべきです。
そのために私は、会員に対してビジョンを共有できるリーダーとなり、個々の個性と情熱を注ぎ合うことによって明るい豊かな社会を築き上げられるような
組織運営および運動展開をしてまいります。